特別支援教育に関するFAQ(※カテゴリを選択してください)
特別支援学級で編成する「特別の教育課程」とは何ですか?
小学校学習指導要領には,
特別支援学級において実施する特別の教育課程の編成について,
○障がいによる学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るため,自立活動を取り入れる。
○下学年の各教科の目標や内容に替えることができる。
○特別支援学校(知的障害)の各教科の目標や内容に替えることができる。
○各教科等を合わせた指導を行うことができる。
と明記されています。
学校教育法施行規則第138条において,「小学校・中学校若しくは義務教育学校又は中等教育学校の前期課程における特別支援学級に係る教育課程については,特に必要がある場合は,(中略)『特別の教育課程』によることができる。」と示されています。
自立活動とは何ですか?
○自立活動は,特別支援学校の教育課程において特別に設けられた指導領域です。
○個々の幼児児童生徒が自立を目指し,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために,知識,技能,態度及び習慣を養い,もって心身の調和的発達の基盤を培うことを目標としています。
○授業時間を特設して行う自立活動の時間における指導を中心とし,各教科等の指導においても,自立活動の指導と密接な関連を図って行うもので,障害のある幼児児童生徒の教育において,教育課程上重要な位置を占めていると言えます。
○自立活動の時間における指導は,学校における自立活動の指導のいわば「要」となる重要な時間です。そして,学校の教育活動全体を通じて行うものでもあります。
○小・中学校学習指導要領では,「障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るため, 特別支援学校小学部・中学部に示す自立活動を取り入れること」と示されており,特別支援学級では教育課程に位置付け指導する必要があります。また,通級による指導においても障がいによる学習上又は生活上の困難を改善し,又は克服することを目的とし,自立活動を行います。
○個別の指導計画に基づく自立活動は,個々の実態に基づいて指導されるものであるので,個別指導の形態で行うことが多いです。ねらいを達成する上で効果的である場合には,集団を構成して指導することも考えられますが,自立活動の指導計画は個別に作成されることが基本であり,最初から集団で指導することを前提とするものではありません。
自立活動の内容について知りたい。
自立活動の具体的な指導内容は,個々の幼児児童生徒の実態把握に基づき,自立を目指して設定される指導目標(ねらい)を達成するために,学習指導要領等に示されている内容から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて設定されるものです。
個々の幼児児童生徒に指導する具体的な指導内容は,次に示す六つの区分の下に示された27項目の中から必要とする項目を選定した上で,それらを相互に関連付けて設定することが重要です。
1 健康の保持
(1)生活のリズムや生活習慣の形成に関すること。
(2)病気の状態の理解と生活管理に関すること。
(3)身体各部の状態の理解と養護に関すること。
(4)障害の特性の理解と生活環境の調整に関すること。
(5)健康状態の維持・改善に関すること。
2 心理的な安定
(1)情緒の安定に関すること。
(2)状況の理解と変化への対応に関すること。
(3)障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する意欲に関すること。
3 人間関係の形成
(1)他者とのかかわりの基礎に関すること。
(2)他者の意図や感情の理解に関すること。
(3)自己の理解と行動の調整に関すること。
(4)集団への参加の基礎に関すること。
4 環境の把握
(1)保有する感覚の活用に関すること。
(2)感覚や認知の特性についての理解と対応に関すること。
(3)感覚の補助及び代行手段の活用に関すること。
(4)感覚を総合的に活用した周囲の状況についての把握と状況に応じた行動に関すること。
(5)認知や行動の手掛かりとなる概念の形成に関すること。
5 身体の動き
(1)姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること。
(2)姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用に関すること。
(3)日常生活に必要な基本動作に関すること。
(4)身体の移動能力に関すること。
(5)作業に必要な動作と円滑な遂行に関すること。
6 コミュニケーション
(1)コミュニケーションの基礎的能力に関すること。
(2)言語の受容と表出に関すること。
(3)言語の形成と活用に関すること。
(4)コミュニケーション手段の選択と活用に関すること。
(5)状況に応じたコミュニケーションに関すること。
※指導の流れや指導内容の具体的事例については,「特別支援学校教育要領・学習指導要領解説 自立活動編(幼稚部・小学部・中学部)」を参考にしてください。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main/1386427.htm
特別支援学級の在籍児童生徒において,特別支援学級で学ぶ時数をどの程度確保すればよいでしょうか。
「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について(4文科初第375号通知)」において,「特別支援学級に在籍している児童生徒については,原則として週の授業時数の半分以上を目安として特別支援学級において児童生徒の一人一人の障害の状態や特性及び心身の発達の段階等に応じた授業を行うこと」と示されています。
特別支援学級で学ぶ時数が,週の授業時数の半分以上となると,週の授業時数が29時間の場合週あたり15時間を超えますが,時間割を作成する上でのポイントはありますか。
特別支援学級1学級に複数名児童生徒が在籍する場合,複数の教育課程が編成されると考えられます。そこで,授業の進め方と教室環境を工夫してください。例えば,教科をそろえたり,少人数でグループ学習を行ったりすることや,1人で課題に取り組む時間を取り入れること等が考えられます。また,パーテーションや壁での仕切りや座席配置の工夫,1人1台端末の活用等も有効です。
特別支援学級と通級による指導の違いは何ですか。
特別支援学級では,大半の時間(週の授業時数の半分以上)を特別支援学級で学ぶこととされています。一方,「通級による指導」は,大部分の授業を通常の学級で受けながら,一部,障がいに応じた特別の指導を特別な場(通級指導教室)で受ける指導形態で,障がいによる学習上又は生活上の困難を改善し,又は,克服するため,特別支援学校学習指導要領の「自立活動」に相当する指導を行います。
指導時間は,週1単位時間~8単位時間程度,LD,ADHDの児童生徒は年間10単位時間~280単位時間となっています。なお,特別支援学級に在籍する児童生徒は,通級による指導を受けることはできません。
幼児児童生徒への指導・支援方法で困ったり,悩んだりしたときに,どこに相談すればいいですか?
(1)総合教育センター特別支援・相談課では,次のような相談支援を行っています。
○相談の対象・・・幼児児童生徒,保護者,教職員
○相談日と時間・・・月曜日から金曜日。午前9時から午後5時まで
○相談の内容・・・不登校やひきこもりなどの相談や,発達障がいを含む障がいのある子どもについての相談等に応じます。保護者からの相談はもちろん,教職員の指導上の質問や相談にも応じます。
総合教育センター特別支援・相談課
こころとからだのサポートセンター
電話 088-672-5200
FAX 088-672-5229
メールアドレス tokubetsushien@mt.tokushima-ec.ed.jp
(2)徳島県では,地域の各学校等に在籍する特別な支援を必要とする幼児児童生徒等の相談や関係機関との連携を支援し,特別支援教育の充実を図ることを目的として,特別支援教育巡回相談員を配置しています。
<特別支援学校>
地域の特別支援教育に関する相談のセンターとして,その教育上の専門性を生かし,地域の小・中学校等の教員や保護者に対して教育相談等の取組を実施しています。
相談は,学校を通してお申し込みください。
学校名 | 電話番号 | 支援地域 |
徳島視覚支援学校 | 088-622-6255 | 東部・北部 |
徳島聴覚支援学校 | 088-652-8594 | 〃 |
板野支援学校 | 088-672-3456 | 〃 |
国府支援学校 | 088-642-4055 | 〃 |
ひのみね支援学校 | 0885-32-7847 | 南部 |
みなと高等学園 | 0885-34-9100 | 〃 |
阿南支援学校 | 0884-22-2010 | 〃 |
阿南支援学校ひわさ分校 | 0884-77-2181 | 〃 |
鴨島支援学校 | 0883-24-6670 | 西部 |
池田支援学校 | 0883-72-5281 | 〃 |
池田支援学校美馬分校 |
0883-55―2237 | 〃 |
※支援地域を決めていますが、障がいの種別等によってはその限りではありません。
東部・北部:徳島市、鳴門市、名西郡、名東郡、板野郡
南部:小松島市、阿南市、勝浦郡、那賀郡、海部郡
西部:吉野川市、阿波市、美馬市、三好市、美馬郡、三好郡
<小・中学校>
特別支援教育に関する専門的知識を有する9名を選任し,配置しています。
相談は,学校を通してお申し込みください。
市町村名 | 学校名 | 電話番号 | 支援地域 |
徳島市 | 国府小学校 | 088-642-1013 | 東部・北部 |
〃 | 上八万中学校 | 088-644-0050 | 〃 |
藍住町 | 藍住西小学校 | 088-692-2436 | 〃 |
小松島市 | 児安小学校 | 0885-32-0171 | 南部 |
阿南市 | 富岡小学校 | 0884-22-0066 | 〃 |
〃 | 平島小学校 | 0884-42-0039 | 〃 |
吉野川市 | 高越小学校 | 0883-42-2022 | 西部 |
美馬市 | 岩倉中学校 | 0883-52-3303 | 〃 |
三好市 | 芝生小学校 | 0883-77-2004 | 〃 |
※支援地域を決めていますが、障がいの種別等によってはその限りではありません。
東部・北部:徳島市、鳴門市、名西郡、名東郡、板野郡
南部:小松島市、阿南市、勝浦郡、那賀郡、海部郡
西部:吉野川市、阿波市、美馬市、三好市、美馬郡、三好郡
特別支援学級には,どのような障がいの種類や程度の児童生徒が在籍していますか。
特別支援学級は,「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)」(25文科初第756号)において,学校教育法第81条第2項の規定に元づいて,特別支援学級を置く場合には,以下の障がいの種類及び程度の児童生徒のうち,特別支援学級において教育を受けることが適当であると認める者を対象としています。
知的障がい学級 | 知的発達の遅滞があり,他人との意思疎通に軽度の困難があり日常生活を営むのに一部援助を必要で,社会生活への適応が困難である程度のもの |
肢体不自由学級 | 補装具によっても歩行や筆記等日常生活における基本的な動作に軽度の困難がある程度のもの。 |
病弱・身体虚弱学級 |
慢性の呼吸器疾患その他疾患の状態が持続的又は間欠的に医療又は生活の管理を必要とする程度のもの。 身体虚弱の状態が持続的に生活の管理を必要とする程度のもの。 |
弱視学級 | 拡大鏡等の使用によっても通常の文字,図形等の視覚による認識が困難な程度のもの。 |
難聴学級 | 補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが困難な程度のもの。 |
言語学級 | 口蓋裂,構音器官のまひ等器質的又は機能的な構音障害のある者,吃音等話し言葉におけるリズムの障害のある者,話す,聞く等言語機能の基礎的事項に発達の遅れがある者,その他これに準じる者(これらの障害が主として他の障害に起因するものではない者に限る。)で,その程度が著しいもの。 |
自閉症・情緒がい学級 |
自閉症又はそれに類するもので,他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難である程度のもの。 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので,社会生活への適応が困難である程度のもの。 |
各教科等を合わせた指導とはどのような指導ですか。
各教科等を合わせた指導とは,各教科,道徳科,特別活動,自立活動及び小学部においては外国語活動の一部又は全部を合わせて指導を行うことをいいます。知的障がい者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校においては,児童生徒の学校での生活を基盤として,学習や生活の流れに即して学んでいくことが効果的であることから従前より実施されています。
各教科等を合わせた指導には、どのようなものがありますか。
知的障がい者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校においては,学校での生活を基盤として,学習や生活の流れに即して学ぶことが効果的であることから,「日常生活の指導」「遊びの指導」「生活単元学習」「作業学習」などとして実践しています,
「日常生活の指導」とは,どのような指導ですか。
児童生徒の日常生活が充実し,高まるように日常生活の諸活動について,知的障がいの状態,生活年齢,学習状況や経験等を踏まえながら計画的に指導するものです。
生活科(特別支援学校教育課程)を中心として,特別活動の〔学級活動〕など広範囲に,各教科等の内容が扱われます。例えば,衣服の着脱,洗面,手洗い,排泄,食事,清潔など基本的生活習慣の内容や,あいさつ,言葉遣い,礼儀作法,時間を守ること,きまりを守ることなどの日常生活や社会生活において,習慣的に繰り返される,必要で基本的な内容です。
日常生活の指導に当たって考慮することはありますか?
日常生活の指導に当たっては,次のような点を考慮することが重要です。
○日常生活や学習の自然な流れに沿い,その活動を実際的で必然性のある状況下で取り組むことにより,生活や学習の文脈に即した学習ができるようにすること。
○毎日反復して行い,望ましい生活習慣の形成を図るものであり,繰り返しながら取り組むことにより習慣化していく指導の段階を経て,発展的な内容を取り扱うようにすること。
○できつつあることや意欲的な面を考慮し,適切な支援を行うとともに,生活上の目標を達成していくために,学習状況等に応じて課題を細分化して段階的な指導ができるものであること。
○指導場面や集団の大きさなど,活動の特徴を踏まえ,個々の実態に即した効果的な指導ができるよう計画されていること。
○学校と家庭等とが連携を図り,児童生徒が学校で取り組んでいること,また家庭等でこれまで取り組んできたことなどの双方向で学習状況等を共有し,指導の充実を図るようにすること。
「遊びの指導」とは,どのような指導ですか。
主に小学部段階において,遊びを学習活動の中心に据えて取り組み,身体活動を活発にし,仲間とのかかわりを促し,意欲的な活動を育み,心身の発達を促していくものです。
遊びの指導では,生活科の内容をはじめ,体育科など各教科等に関わる広範囲の内容が扱われ,場や遊具等が限定されることなく,児童が比較的自由に取り組むものから,期間や時間設定,題材や集団構成などに一定の条件を設定し活動するといった比較的制約性が高い遊びまで連続的に設定されます。
また,遊びの指導の成果を各教科別の指導につながるようにすることや,諸活動に向き合う意欲,学習面,生活面の基盤となるよう,計画的な指導を行うことが大切です。
遊びの指導に当たって考慮することはありますか?
遊びの指導に当たっては,次のような点を考慮することが重要です。
○児童の意欲的な活動を育めるようにすること。その際,児童が,主体的に遊ぼうとする環境を設定すること。
○教師と児童,児童同士の関わりを促すことができるよう,場の設定,教師の対応,遊具等を工夫し,計画的に実施すること。
○身体活動が活発に展開できる遊びや室内での遊びなど児童の興味や関心に合わせて適切に環境を設定すること。
○遊びをできる限り制限することなく,児童の健康面や衛生面に配慮しつつ,安全に遊べる場や遊具を設定すること。
○自ら遊びに取り組むことが難しい児童には,遊びを促したり,遊びに誘ったりして,いろいろな遊びが経験できるよう配慮し,遊びの楽しさを味わえるようにしていくこと。
「生活単元学習」とは,どのような指導ですか。
児童生徒が生活上の目標を達成したり,課題を解決したりするために,一連の活動を組織的・体系的に経験することによって,自立や社会参加のために必要な事柄を実際的・総合的に学習するものです。
広範囲に各教科等の目標や内容が扱われ,一つの単元が,2,3日で終わる場合もあれば,1学期間など長期にわたる場合もあります。単元の配置,各単元の構成や展開について組織的・体系的に検討して計画していく必要があります。
生活単元学習を実施するに当たって考慮することはありますか?
生活単元学習を実施するに当たっては,次のような点を考慮することが重要です。
○単元は,実際の生活から発展し,児童生徒の知的障害の状態や生活年齢等及び興味や関心を踏まえたものであり,個人差の大きい集団にも適合するものであること。
○単元は,必要な知識や技能の習得とともに,思考力,判断力,表現力等や学びに向かう力,人間性等の育成を図るものであり,生活上の望ましい態度や習慣が形成され,身に付けた指導内容が現在や将来の生活に生かされるようにすること。
○単元は,児童生徒が指導目標への意識や期待をもち,見通しをもって,単元の活動に意欲的に取り組むものであり,目標意識や課題意識,課題の解決への意欲等を育む活動をも含んだものであること。
○単元は,一人一人の児童生徒が力を発揮し,主体的に取り組むとともに,学習活動の中で様々な役割を担い,集団全体で単元の活動に協働して取り組めるものであること。
○単元は,各単元における児童生徒の指導目標を達成するための課題の解決に必要かつ十分な活動で組織され,その一連の単元の活動は,児童生徒の自然な生活としてのまとまりのあるものであること。
○単元は,各教科等に係る見方・考え方を生かしたり,働かせたりすることのできる内容を含む活動で組織され,児童生徒がいろいろな単元を通して,多種多様な意義のある経験ができるよう計画されていること。
「作業学習」とは,どのような指導ですか。
作業活動を学習活動の中心にしながら,児童生徒の働く意欲を培い,将来の職業生活や社会自立に必要な事柄を総合的に学習するものです。
児童生徒の働く意欲を培いながら,将来の職業生活や社会自立に向けて基盤となる資質・能力を育むことができるようにしていくことが重要とされています。
作業学習を実施するに当たって考慮することはありますか?
作業学習を実施するに当たっては,次のような点を考慮することが重要です。
○児童生徒にとって教育的価値の高い作業活動等を含み,それらの活動に取り組む意義や価値に触れ,喜びや完成の成就感が味わえること。
○地域性に立脚した特色をもつとともに,社会の変化やニーズ等にも対応した永続性や教育的価値のある作業種を選定すること。
○個々の児童生徒の実態に応じた教育的ニーズを分析した上で,段階的な指導ができるものであること。
○知的障害の状態等が多様な児童生徒が,相互の役割等を意識しながら協働して取り組める作業活動を含んでいること。
○作業内容や作業場所が安全で衛生的,健康的であり,作業量や作業の形態,実習時間及び期間などに適切な配慮がなされていること。
○作業製品等の利用価値が高く,生産から消費への流れと社会的貢献などが理解されやすいものであること。
特別支援学級担任は,交流学級担任とどのような連携をとればよいでしょうか。 *交流学級とは,特別支援学級の児童生徒が交流及び共同学習として学ぶ通常の学級のことを言います。
交流学級,特別支援学級のどちらも児童生徒が学ぶ場所です。特別支援学級の担任は,交流学級の担任と連携して学びの場の環境を整えることが大切です。
新学期の準備にあたり,特別支援学級の担任は,交流学級の担任と連携して,学校が準備する物や,学校から児童生徒への配付物を受け渡す場所に至るまで,どこで,どのような方法で行うかについて,打ち合わせをすることが大切です。
特別支援学級担任は,入学式で新入生や保護者に対してどのような配慮をすれば良いでしょうか。
保護者は,児童生徒の新生活について心配と不安な気持ちが大きくなっていることが予想されます。そのような状況で,担任からの声かけや関わり方,児童生徒自身の様子を見て,今後の学校生活への不安感も軽減されていくようです。入学式では,十分配慮した対応と保護者への心遣いを忘れないようにしましょう。
特別支援学級においての学習の時間もあることから、保護者と一緒に教室の確認をすることも大切です。特別支援学級の担任と交流学級の担任,それぞれの先生と一緒に学習する教室の確認をするようにしましょう。
特に必要な児童生徒の場合には,下見と練習を行う場合もあります。保護者の希望により,前日や当日の早い時間に行うこともあります。学校側の理解と協力が必要となります。
児童生徒が入学してくるまでに,学校全体で支援できる体制を整えておきましょう。
自閉症の児童生徒がパニックになったときは,どのように対応すればよいでしょうか。
不要な刺激を与えないように静かに声かけし,必要に応じて静かで落ち着く場所に移動するようにします。パニック時に教員が大声を出すと,ますます不安感や不快感が募り,余計にエスカレートし,パニックが大きくなります。パニック中に注意しても伝わりません。静かに,声かけも少なく対応しましょう。
パニックになったときに,好きな場所や好きな活動ができると,「パニックを起こせば,要求が叶えられる」「嫌なことから逃避できる」ことを学習してしまいます。困った行動をやめさせるのではなく,その行動と置き換わる適切な行動を教えましょう。
また,家庭や社会で生活していく上で,指示に従うルールを教えることも大切です。
記録をもとに,パニックを起こした理由を探り,「パニックを起こさなくてもよい環境づくり」を工夫することが重要です。
終了時刻になっても好きな遊びや課題学習を終わることができないときは,どのように対応すればよいでしょうか。
全体的な流れや次の活動の見通しが持てるように,スケジュールを提示し,「好きな遊びや課題学習が次はいつできるのか」を伝えます。
また,見通しが持てるようにタイマー等を手渡し,終わりを予告します。活動を終了できれば,「終わりのルール」が守れたことを本人が喜ぶ方法で称賛します。
家庭や社会で生活していくうえで,指示に従うルールを教えることは大切です。スケジュールの活用やタイマーなどを使った終わりの予告など,見通しを持たせ,ルールを守りやすい環境を整えましょう。
一度学んだことを修正するのは,新しいことを教える以上に時間がかかるので,最初から正しい行動を教えることが大切です。
集団活動において,自分の好きなことばかりやりたがる場合,どのように対応すればよいでしょうか。
苦手なことにも取り組めるようになるためには,具体的に視覚的支援を用いて始まりと終わりを明確に提示し,少し頑張ればできそうな活動からスモールステップで取り組みます。活動ができたときは,本人が喜ぶ方法で称賛します。
本人が納得しないまま「好きなこと」を取り上げるのは,かえって落ち着きがなくなり,パニックにもつながります。
その活動において,指示が「わからない」のか,スキルが未習得で「できない」のか,それまでの経験で「やりたくない」のかなど,活動しない理由を考え,それに応じた支援方法を考えてみましょう。
教員が何も対応をしないと,本人は「しなくてもいい」「好きなことをしてもいい」ということを学習してしまいます。
聴覚過敏があり,耳を塞いで活動を嫌がったり,急に大声を上げて教室から飛び出したりする児童生徒には,どのような対応をすればよいでしょうか。
あらかじめ苦手な音が出ることが予想できる場合は,事前に予告し,必要ならば軽減できる防音具(イヤーマフ,耳栓等)を装着するように声かけをします。また,苦手な音を軽減させるため,あらかじめ椅子脚の先端にテニスボールや椅子脚カバーを取り付けておきます。苦手な音から避難したいときは,教員に伝えてから決められた場所(雑音の少ない空き教室,保健室等)に移動するなどのルールを決めておきます。
「無理矢理にでも慣れさせる」という対処法は厳禁です。解決に繋がらないどころか,心身の健康を害するリスクもあります。また,過敏性は,心理的に不安定になるとより強くなるので,過敏性が強くなってきたときは,環境やスケジュールを見直しましょう。
自閉症の児童生徒に有効な「構造化」について教えてください。
スケジュールの提示(時間の構造化)は,見通しを持った活動が可能になり,指示待ちの態度の形成を予防し,自分の力で自主的に行動しようとする態度を育てることができます。また,あらかじめ予定を伝えることで,混乱からくるパニックを減らすことができます。「声かけでわかる」ではなく,「自分の力でわかる(できる)」を目指しましょう。
ワーキングエリア(学習に取り組むための場所)やカームダウンエリア(落ち着くための場所)など各空間を物理的に区切り,その空間では何をすればよいかわかるようにし,活動と場所を結びつけることも有効です(物理的構造化)。ただし,これらのエリアを廊下や外が見える位置に設置すると,戸外からの刺激が学習の集中を妨げます。また,カームダウンエリアの設置は安全面に配慮しましょう。
ワークシステム(手順の構造化)は,教員が絶えず密着して指示や指導をしなくても,課題の意味,手順,量などを理解して「一人で自立して」学習できるようにするためのものです。指導は,全ての課題が終わり,教員に終了報告があってから行いましょう。
児童生徒が自立して活動できていなかったり,混乱する様子が見られたりしたときは,構造化の見直しを行いましょう。
知的障がいのある児童生徒に対する教育的対応の基本について教えてください。
抽象的な内容は理解しにくいため,より具体的な指示や活動内容を提示するように工夫します。数量や言語の理解には多くのステップが必要であり,自作教材・教具の作成等,その都度適切な教材を用意します。成功体験が少なく,自己肯定感が低い児童生徒が多いため,結果よりも過程や意欲に目を向け,児童生徒に応じたほめ方を行います。
目標は,スモールステップ(はじめから高い目標を設定するのではなく,目標を細分化し小さな目標の達成を積み重ねながら最終的な目標に近付いていく)で設定し,その都度ほめて成功体験を積み重ねていくことが大切です。
具体的な指示例として,「ちょっと待ってて」→「10数えるまで待ってて」,「廊下を走らない」→「廊下を歩きましょう」などが考えられます。「やめさせたい行動」ではなく,「してほしい行動」を具体的に伝えると,児童生徒は,自分がするべき事を理解しやすくなります。
知的障がいのある児童生徒に対する指導内容について教えてください。
ルールの理解等の社会性を身につけていくための指導や,児童生徒の将来を考え,職業や生活に活用できる実際的な力をつけることができる指導を行います。
机上学習だけでなく,算数科でお金の学習をした後,生活単元学習で買い物学習をするなど,実体験を含んだ授業を確保することが大切です。
また,必要に応じて,知的発達の状態に加えて,視覚や聴覚の特徴的な感覚,手先の感覚や緻密性の困難さなどを把握して指導しましょう。
病弱児の学習活動について配慮すべきことを教えてください。
学習時間の制約の状況を考慮して学習内容を適切に精選し,基礎的・基本的な事項に重点を置いて学習できるようにします。また,学習空白や学習の遅れの状況について的確に把握し,それらを補完するような学習活動ができるようにします。
運動の制限を余儀なくされている慢性疾患のある児童生徒の体育については,授業への参加の機会を無くすのではなく,(公財)日本学校保健会作成の「学校生活管理指導表」に基づく主治医・学校医の指導によって,身体活動の種類や程度などを決めるようにしましょう。
体験的な活動を伴う内容の指導に当たっては,児童生徒の病気の状態や学習環境に応じて,間接体験や疑似体験,仮想体験等を取り入れるなど,指導方法を工夫し,効果的な学習活動が展開できるようにすることが求められています。
特別な支援や配慮を必要とする児童生徒は,教員との一対一での指導を常に受けることが望ましいのでしょうか。
特別支援教育は,「幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し,その持てる力を高め,生活や学習上の困難を改善又は克服するため,適切な指導及び必要な支援を行うもの」(中央審議会答申「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」より)であり,一対一での指導を常に受けることが望ましいわけではありません。例えば,特別支援学級も,小学校(中学校)の学級集団の1つであり,友だちや教員と関わり合いながら学んでいきます。
特別支援学校の教育課程は,どのように編成されていますか。
特別支援学校の教育課程は,小学校(中学校,高等学校)の教育課程に加えて,自立活動で編成されています。「自立活動」は,特別支援学校の教育課程において,特別に設けられた指導領域です。特別支援学級や通級による指導において,特別の教育課程を編成する場合は,自立活動を取り入れることと示されています。なお,知的障がい者である児童生徒に対して教育を行う特別支援学校の各教科は別に定められています。
弱視特別支援学級に入級できる障がいの程度を教えてください。
弱視特別支援学級に入級可能な障がいの程度は,「拡大鏡等の使用によっても通常の文字,図形等の視覚による認識が困難な程度のもの」です(平成25年10月4日付け25文科初第756号初等中等教育局長通知)。
「視覚による認識が困難な程度のもの」とは,小・中学校等の通常の学級に在籍する子供に比べて通常の文字等の認識に時間を要するとともに,通常の学級においては指導内容が分かり学習活動に参加している実感・達成感をもちながら,学ぶことに困難があり,かつ障がいによる学習上又は生活上の困難を改善・克服するための指導を系統的かつ継続的に行う必要のある状態を指しています。
(引用:障害のある子供の教育支援の手引 R3.6文部科学省)
弱視特別支援学級に在籍する児童生徒が使用する教材は,すべて拡大することで「配慮ができている」といえるのでしょうか。
児童生徒の見えにくさはさまざまであり,拡大が逆効果となる場合もあります。
どのような見えにくさがあり,拡大,縮小,解像度,コントラスト,配置の工夫,聴覚活用など,どのような変更が良いのか,児童生徒一人ひとりの状態を考慮して教材を作成しましょう。
弱視特別支援学級では,授業中,教室内をできるだけ明るくした方がよいのでしょうか。
窓からの自然光,天井灯,デスクライトなどを利用することで,まぶしさが生じることがあります。机上の照度の確保にデスクライトが効果的な場合もありますが,光源の位置,照明カバーや反射面等に留意し,窓の遮光カーテンを閉めるなど,不快なまぶしさを軽減する教室環境を整えましょう。
弱視特別支援学級に在籍する色彩への反応が弱い児童生徒の場合,教材には色の使用を避けた方がよいのでしょうか。
色彩への反応が弱い児童生徒の場合,使用する教材において色の使用を避けるのではなく,配色の工夫や明度差の考慮など,認知しやすい色彩を用いましょう。そうすることで見やすさを高めることがあります。また,色の三要素(色相,明度,彩度)を踏まえた組合せの配慮など,色に関する知識も教育上,大切です。
特別支援学級に在籍する児童生徒に対する配慮事項等の共通理解は,児童生徒に関わる最小限の教員のみで行えばよいのでしょうか。
障がいのある児童生徒の指導に当たっては,担任を含む全ての教職員間において,個々の児童生徒に対する配慮等の必要性を共通理解するとともに,教職員間の連携に努めることが重要です。
弱視特別支援学級において,地図を教材として用いる場合の注意点を教えてください。
弱視特別支援学級において,地図を教材として用いる場合は,単に全体を拡大するのではなく,海岸線や等高線の単純化,記載情報を必要最小限にする,文字を大きく・線を太くするなど配慮した描き替えが必要です。
「学習の空白」とは何ですか。
「学習の空白」とは,病気による長期間ないしは短期間であっても繰り返しの入院,あるいは外来通院のため,学習すべき各教科等の内容を系統的あるいは部分的に学習できていない状態のことを言います。
一般的に,病弱・身体虚弱特別支援学級に在籍する児童生徒に対して,「学習の空白」に配慮した指導が必要であると言われています。
「医療的ケア」とは,一般的にどのような行為をいうのでしょうか。
「医療的ケア」とは,一般的に学校や在宅等で日常的に行われている,痰の吸引・経管栄養・気管切開部の衛生管理等の医療行為を指します。
医療的ケアとは,病気治療のための入院や通院で行われる医療行為を含みますか。
病気治療のための入院や通院は含まれません。
学校で行われる医療的ケアの目的は何ですか。
医療的ケアを必要とする幼児児童生徒の教育活動を保障することを目的としており,県教育委員会では,特別支援学校における医療的ケアについて,医師の指示のもとで特別支援学校に配置された看護師が行う日常的・応急的ケアとして,位置づけています。
特別支援学校において医療的ケアを実施することで,教育効果がありますか。
特別支援学校において,医療的ケアを実施することは,医療的ケアを必要とする幼児児童生徒の教育機会の確保と充実に繋がっています。
・ 生活リズムの形成
・ 意思や希望を伝える力の育成
・ 自己肯定感・自尊感情の向上
・ 信頼関係の構築
などの教育効果があります。
小学校等の設置者(市町村教育委員会等)によって配置された看護師等が医療的ケアを行う際の教職員の役割は何ですか。
医療的ケア児の健康状態の見守り,看護師との情報共有,緊急時の対応などがあります。また,医療的ケア実施の際には,医療的ケア以外の支援,例えば,医療機械・器具の装着時に衣服の着脱を手伝ったり,医療的ケアを受けやすい姿勢保持の補助を行ったりすること等が考えられます。
小学校等が安心・安全に医療的ケア児を受け入れることができるように,小学校等の設置者(市町村教育委員会等)は,どのようなことを行う必要がありますか。
小学校等の設置者(市町村教育委員会等)においては,教育,医療,保健及び福祉などの関係部局や機関のほか,保護者の代表者などで構成される協議会(医療的ケア運営協議会)を設置するなどして,医療的ケア児に関する総括的な管理体制を構築する必要があります。
医療的ケアの実施体制は,医療的ケア児が実際に小学校等に入学してから整えればよいのでしょうか。
医療的ケア児が安全かつ安心な学校生活を送ることができるように,入学前から体制を整えることが重要です。
教職員は,医療的ケア児に関わるようになってから,学校に勤務している医療的ケアを行なう看護師と連携を構築すればよいのでしょうか。
教職員と看護師は,医療的ケア児と関わる前から情報を共有したり,信頼関係を築いたりするなど連携を構築することが重要です。
医療的ケアを行うにあたり,診断書等の書類は必要ですか。
県立特別支援学校においては,次のように定めています。
「主治医指示書」及び「医療的ケア実施依頼書」の提出が必要です。「主治医指示書」は主治医に作成していただくものです。これをもとに医療的ケア校内委員会で協議・検討を行います。 「主治医指示書」は原則一年に一度提出をお願いしています。ただし,年度途中で健康状態の変化及び医療的ケアの内容に変更が生じた場合は,その都度,主治医指示書の加筆・訂正または新たな指示書の提出をお願いしています。また,「主治医指示書」作成においては,費用がかかる場合があります。この場合の費用については,保護者負担となります。
「県立特別支援学校における医療的ケアについて」リーフレットより
医療的ケアは,校外学習や宿泊行事でも実施可能ですか。
県立特別支援学校においては,校外学習や宿泊行事には看護師が同行することができますので,原則保護者の付き添いなく,医療的ケアを実施することができます。ただし,主治医の判断や医療的ケアの内容等によっては,保護者の付き添いをお願いする場合があります。徳島県では,校外学習や宿泊行事の際には,学校の実情に応じて,学校に外部看護師を派遣し,校内・校外の医療的ケアが安全に実施できるよう体制を整えています。
「県立特別支援学校における医療的ケアについて」リーフレットより
福祉的就労とは,どのようなものでしょうか。
福祉的就労とは,主に「障害者総合支援法」における障がい福祉サービス(障がいをサポートするサービスや支援)を提供している事業所等で働くことをいいます。
障がい福祉サービスには,介護が必要と認定された人にニーズに応じたサービスを提供する「介護給付」と,生活能力や職業スキルなどを身に付ける訓練を提供する「訓練等給付」があります。
生活能力や職業スキルなどを身に付ける訓練を提供する「訓練等給付」には,どのようなサービスがありますか。
「訓練等給付」のうち,訓練系・就労系のサービスとしては,次のようなものがあります。
○就労移行支援…一般企業等へ就労を希望する人に,一定期間,生産活動,職場体験などの機会を提供し,就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練や求職活動に関する支援等を行う。
○就労継続支援A型(雇用型)…一般企業等での就労が困難な人に,雇用して就労の機会を提供するとともに,能力の向上のために必要な訓練を行う。
○就労継続支援B型(非雇用型)…一般企業等での就労が困難な人に,生産活動等の機会を提供するとともに,能力の向上のために必要な訓練を行う。
○就労定着支援…一般企業等へ移行し就労した人に,家事や体調管理など就労に伴う生活面の課題に対応するための支援を行う。
○自立訓練(機能訓練・生活訓練)…自立した日常生活や社会生活ができるよう,一定期間,身体機能や生活能力の向上のために必要な訓練を行う。
「訓練等給付」の「就労継続支援(A型・B型)」を利用するには,どのような手続きが必要でしょうか。
市町村の窓口(福祉事務所及び町村障がい福祉担当)か相談支援事業者に相談・申し込みが必要です。
※相談窓口一覧は,徳島県ホームページ「令和3年度徳島県障がい者(児) 福祉のしおり 1相談窓口」から,相談支援事業者一覧は,徳島県ホームページ「令和4年度徳島県障がい者(児) 福祉のしおり【別冊】 (別冊)4指定相談支援事業」からダウンロードできます。
アドレス:https://www.pref.tokushima.lg.jp/ippannokata/kenko/shogaifukushi/7206845
〒779-0108 徳島県板野郡板野町犬伏字東谷1-7
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088-602-7205(特別支援担当)
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