徳島県では、令和4年度までは「ポジティブな行動支援」を、令和5年度からは「ポジティブ行動支援」を使用しています。(ホームページ内では、両方の言葉が使われています。) |
Q&A
「ポジティブ行動支援」とは何ですか?
教職員の幼児・児童・生徒に対する「こんな姿になって欲しい」、「成長してほしい」や、幼児・児童・生徒自身が主体的に「こんな姿になりたい」を実現化するための枠組みです。
詳しくは平成30年度発行のリーフレットを開いて「ズバッとわかるポジティブな行動支援」をご覧ください。答えはきっと見つかりますよ!
「ポジティブ行動支援」って、要するに子供を褒めたらいいんでしょう?
「ポジティブ行動支援」では、確かに子供を褒めることを手法として推奨しています。しかし、注意していただきたいのは、子供を褒めるということは、あくまでも手段(方法)の一つです。
褒めればそれでいいというものではありません。
「ポジティブ行動支援」で大切にしていること(目的)は、子供たちが安心して学習や学校生活を送れるようにすることであり、自分の存在を認められるあたたかな環境の中で、自信を持って主体的に行動できる子供を増やすことです。
なぜ、「ポジティブ行動支援」では良い行動が増えるのですか?
「ポジティブ行動支援」は,上の図のような工夫をすることで子供たちの良い行動を形成することを目指しています。このような仕組みは科学的に効果や有効性が証明されています。
「子供を褒めて伸ばす」ことの重要性は以前から指摘されています。なぜ、今「ポジティブ行動支援」で子供を褒める必要があるのでしょうか?
子供が「望ましくない行動」をする背景として、うまくいかなかったなどの失敗経験や叱られた経験が積み重なっていることが考えられます。そのような経験が重なると、子供は自信をなくし、やる気も低下した状態になり、マイナスのサイクルが回り出すのです。
マイナスをプラスに変え、子供の望ましい(良い)行動を増やすためには、「できた!」「わかった!」「褒められた!」「認められた!」という成功経験が必要です。
近年の心理学や行動科学などのさまざまな学問の発展により、「ポジティブ行動支援(PBS)」はその有効性が科学的に証明されています。その知見を教育分野へも応用しようという流れが、ここ数年高まってきています。
効果的な「褒め方」、「認め方」とはどのようなものでしょうか?
効果的に褒めたり、認めたりすることは、子供たちと関わる際にとても重要な要素です。
教職員の中には、経験的・直感的に効果的な褒め方ができ、鮮やかに子供の心をつかまれる方がいます。その方たちのほとんどは、子供をどのように評価すれば(つまり褒めたり、認めたりすれば)、子供が「うれしい」「また頑張ってみよう」と思えるのかを把握しています。
効果的に評価を行う時に心がけたいこととして、評価される側(子供)は何をうれしいと感じるのか、何で認められたいと考えているのかということを把握することが重要です。これには個人の性格や考え方のクセ、興味・関心、嗜好などを知っておくことが必要です。また、年齢など発達段階による影響も受けます。そのようなことを考えて称賛を行うと、きっと効果的な褒め方・認め方ができるでしょう。
あなたが関わっている目の前の子供にチャレンジしてみてください。
子供を甘やかしてはダメだと思うのですが、「ポジティブ行動支援」では子供を叱ることはないのですか?
もちろん、子供の命や身体の安全に関わることや人権を侵害するような行為に対しては、毅然と対応することが必要ですし、叱ることも必要です。ただし叱ることについては、次のことに気をつけましょう。
「ポジティブ行動支援」の考え方では、上の図のポイントのように、叱った後、次にどうすれば良いのか説明することが必要と考えています。また、叱ったらその後を重視しています。よく子供の行動を観察しておいて、少しでも適応的な行動をとれたり、努力が見られたりしたら、すかさず褒めたり認めたりします。
しかし、叱る(注意する)だけでは望ましい行動が増えにくいです。望ましい行動を教え、それが起きやすい環境設定をし、できたことを認め、褒めて、できた経験を増やしていくことが大切です。
行動支援の方法が変われば、クラス経営も変わりますか?
まだ、「ポジティブ行動支援」に取り組んでいない学級であれば、ほとんどの場合、幼児・児童・生徒によい方向への変化が見られます。
詳しくは平成30年度発行のリーフレットをご覧ください。「学級成長物語」として進めていく過程やその際のポイントについて説明しています。
支援が必要な幼児・児童・生徒に対してのみ行うものですか?
「ポジティブ行動支援」は包括的な多層モデルを意識しています。
全幼児・児童・生徒に対して行うユニバーサルなサポートである1次的支援(第1層支援と呼んでいます)と、1次的支援よりももっと手厚い支援が必要な幼児・児童・生徒に対して行う2次的支援(第2・3層支援と呼んでいます)とがあります。
支援が必要な幼児・児童・生徒に対してのみ行うものではありません。
「ポジティブ行動支援」が有効でない場合の事例はあるのですか?
子供たちは、所属している集団や関わりのある人々など、周囲の影響を受けています。「ポジティブ行動支援」を行う際には、まず対象となる集団または個人の実態把握をしていただくことが重要です。
その上で、どのような仕組みや仕掛けを作れば、効果的に対象となる集団や個人の望ましい行動を形成できるか、作戦を立て準備することが必要です。
「何回やってもうまくいかない」、「どうやっても、この子やこの集団には有効でない」などの悩みの背景には必ず何らかの原因があります。
また、一方で環境を整え子供たちも頑張っていて、今が褒めたり、認めたりするチャンスというときに、適切な関わりをされずにタイミングを逃してしまうという事例も見かけます。
学校の運営組織の中で、「ポジティブ行動支援」を担当するのはどの分掌ですか? また、新しく取り組むとしたら、どの分掌が適切でしょうか?
学校(園)によって事情は異なると考えられますが、次のようなケースがあります。
- 特別支援教育コーディネーターを中心としたチーム
- 生徒指導関係のチーム
- 校内のポジティブ行動支援推進リーダーが主導し、各部会(各学年)がそれぞれの担当領域に関しては行動指導計画を作成
- 校務分掌を見直し、新たに新設(小・中学校の児童・生徒の委員会)
★各校の現状に合わせて、最もやりやすい形で運用してください。
なかなかポジティブな言葉かけができません。ポジティブ行動の目標(してほしいこと)の設定がずれている(高すぎる)のでしょうか?意識改革が必要な気がするのですが、第1歩、何から始めればいいでしょうか。
人間の心理として、どうしても「できていないところ」に目がいってしまうことはあると思います。いま「できているところ」に注目するように心がけてみるだけでも、きっと子供のよいところに気がつくと思います。
集団でも同じことが言えます。「できていない子供」に注目するよりも「できている子供」のがんばりをまず認めて褒め、その行動を見ている他の子供たちの行動を修正するという方法もあります。
また、「ポジティブ行動支援」を始める際には、自分の中にある褒めたり、認めたりする基準を少し下げてみましょう。褒める回数がきっと増えると思います。
しかし、どうしても褒めるのが苦手、慣れていないという方もいると思います。うなずきながら感嘆詞(「あ~」、「おおっ!」、「うんうん」、「いいっ!」など)を使って称賛する、グーサインやOKサイン、視線で称賛する、連絡帳に特別なシールを貼って賞賛する、日記に長めにコメントを書くなど、自分の得意な方法、苦にならない方法で実施してみてください。
学校全体で「ポジティブ行動支援」に取り組む際に、大規模な学校では難しさがあると思うのですが、どのようなシステムで行うのがよいのでしょうか。ポイントはありますか?
大規模な学校であっても、「ポジティブ行動支援」を進めていく際には教職員間で丁寧な合意形成を行い、既存のシステムを有効に活用して、子供たちにポジティブに関わっていくことが必要です。つまりすることはほぼ同じです。
ただ、大規模校では学校全体で話し合いの時間をとるということが難しい場面もあるかもしれません。そのような場合は、低・中・高学年や学年団などの単位で取り組みを進めていくことも重要です。
動きやすい単位で取り組みを進めていくことで、校内全体へよい流れを広められるようにしていきたいですね。
学校全体で取り組むためのポイントを教えてほしいのですが。
学校事情により、多少ポイントは変わってくるところはあると思います。しかし、コツは共通しています。
どの学校でも共通する成功のためのコツは、「丁寧な教職員間での共通理解」と「合意形成に向けて調整するリーダーの存在」です。
共通理解は「ポジティブ行動支援」の実践を通して少しずつ深まっていくものですが、その基盤となる目標の妥当性や基本的な考え方の共有は必ずやっておいた方がよいと思います。
また、教職員間の異なる意見を調整する役割を担う教員や取り組みを進めていくリーダー的な役割を担う教員も必要です。
大切なことは、教職員間で話し合いの機会を持ち、学校の方向性や子供たちの指導を共通で行うというチームの意識を持つことでしょう。そのための方策としてPBSは有効に機能すると思います。
「ポジティブ行動支援」に学校全体で取り組もうと思ったとき、何からどのように取り組んでいけばよいでしょうか? また、「ポジティブ行動支援」を学校全体で行う取組への理解や協力を得るためには、どのような手順で行えばよいのですか?
よく似ている質問なので、まとめてお答えします。
まずは、校内で「ポジティブ行動支援」に共感してくれる仲間となる教職員を増やしましょう。そのためにも、ご自身が、普段の授業や指導の中で「ポジティブ行動支援」を実践していきましょう。
あなたが担任であれば、まずはあなたの学級で実践し、子供たちによい変化が現れると、校内でもあなたの言葉に耳を傾けてくれる仲間が増えていくでしょう。その具体的な方法の手順は、平成30年度発行のリーフレットを見ていただくと、イメージできると思います。
機が熟してくれば、リーフレットを活用したり、県内であれば総合教育センターの要請訪問等を活用したりして、校内研修を行い学校全体で取り組むように提案してみましょう。
「ポジティブ行動支援」について、保護者や周りの教職員の協力や理解を得て連携していくためにはどうしたらよいのでしょうか?
【教職員の協力を得るために】
話し合いの機会を定期的に設けることが必要です。工夫としては職員研修の年間計画に入れておくことや職員会議の後に5分程度時間を取るなどが考えられます。
ポイントは、短時間で、効果的に!連携では相手の意見を否定しないが基本です。
【保護者の理解を得るために】
学校での取組や子供たちの変化を、積極的に保護者や地域に発信していくことが大切です。
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